これまでのところでは、「くすりの候補」が「くすり」となるまでの過程を中心に述べてきましたが、ここでは患者さんからたずねられることの多い「副作用」について触れておきたいと思います。
「くすり」には、その種類によってさまざまな好ましい効果がある反面、好ましくない作用(副作用)もあります。多くの「くすり」は血液とともに全身に運ばれています。体質や体調などによって副作用が出ることもあります。
しかも、副作用の全くない「くすり」は存在しません。「くすり」が持つもともとの性質として副作用を伴うこともあります。そうした副作用の中で、まれではありますが、生命にかかわる重要な副作用が知られています。
「くすり」を使ううえで忘れてはならないこうした副作用には、例えば以下のようなものがあります。
白血球は細菌を殺す働きをしていますので、それが減ると感染を起こしやすくなり、また、いったん感染が起こると治りにくくなります。
中毒性表皮壊死症は、「くすり」による重い皮膚の発疹で、火傷のように皮膚がむけてしまうためにそこから細菌が体に入り、ひどい感染症を引き起こします。
アレルギー性ショックは、その人にとって初めての「くすり」を使ったときや、しばらく間をおいて再び同じ「くすり」を使ったときなどに起こります。
「くすり」の副作用には、これら以外にも、
などがあり、「くすり」の種類によって異なります。
以上に述べた副作用は、治験で使われる「くすりの候補」によっても起こる可能性がないとは言えません。 「くすりの候補」を使用していて、見慣れない発疹、 発熱、のどの痛み、血が止まりにくい、などの症状やその他気になる症状があるときは、速やかに治験を行っている医師に申し出てください。
「くすり」には副作用が避けられないことを考えますと、大切なのは、副作用への対処方法ということになります。副作用をいかに未然に防止するか、もし副作用が起きてしまった場合には、いかにそれを早期に発見して適切に処置するかが、とても重要です。
このことは、治験の場合も同様です。
そのためには、医師の指示通りに正しく「くすり」を使うこととあわせ、「くすり」の副作用についてよく知っておくことが大切です。副作用にも重要なものと、それほどでもないものとがあります。先に述べたような重要な副作用は、まれにしか起こりませんが、どんな「くすり」を使っている場合にも副作用は起こり得るものだと考え、何か異常を感じたならば早めに申し出てください。
治験においては、副作用に特別の注意が払われます。治験を行う医師は、治験に参加された患者さんを注意深く診察します。患者さんも医師の指示に従って、きちんと診察を受けてください。もし副作用のおそれがあれば、速やかに必要な処置が行われます。他の患者さんで見られた副作用についても説明され、治験への継続参加の意思が確認されます。
治験は、参加される患者さんの人権と安全の保護に最大限配慮しながら、「くすりの候補」の効き目と副作用などを慎重に調べます。 こうしたことを踏まえて、実際に治験への参加に協力を求められた場合には、その治験について十分な説明を受け、参加するかどうかを自分自身の自由な意思に従って判断していただければと思います。
※本文は平成9年度厚生科学研究「新GCP普及定着総合研究班最終報告書」 "1.インフォームド・コンセント検討作業版最終報告書”に所載の資料2を参考に作成しました。